雨の日、温泉宿に着くと、晴れた日とは少し違う時間が始まります。屋根を細かくたたく雨音、しっとり色濃く見える木々、湯上がりの窓辺。観光の予定を詰め込まず、宿の中でゆっくりするのも、猿ヶ京温泉らしい楽しみ方です。
このページは、2011年8月に「しとしと…」という題で公開した短い宿日記を全面的に書き直したものです。当時の記事にあった大雨時の状況や工事途中の庭については、現在の案内としては使わず、雨の日を心地よく過ごすための読み物に整えました。
まずは、雨音を旅のBGMに
雨の日は、外へ出る前に少し立ち止まってみてください。軒先から落ちる雫や、葉に当たる雨の音は、場所によって響き方が変わります。にぎやかな音楽とは違い、聞こうとしなくても自然に耳へ入ってくるのが雨音のおもしろいところです。
到着してすぐ予定表を開く代わりに、お茶を一杯。窓の外を眺めながら「今日はどこまで行こうか」と話す時間も、旅のうちです。雨が弱くなるのを待ってもよし、そのまま宿でのんびりすると決めてもよし。少し余白のある一日は、後から思い出すと意外に印象深く残ります。
濡れた庭は、緑の色がひとつ深くなる
晴天の庭では光と影が目を引きますが、雨の日は苔や葉、木の幹の色がくっきり見えてきます。雫を抱えた葉を一枚見つけたり、水面に広がる輪を眺めたり。遠くへ出かけなくても、目の前の景色には小さな発見があります。
ただし、このページの写真や旧記録に写る庭、石段、照明、東屋などが、現在も同じ配置や状態であるとは限りません。ここでは現況の設備案内ではなく、雨の日に景色を楽しむヒントとしてご紹介しています。館内や庭をご覧になる際は、当日の案内に沿ってお楽しみください。
湯上がりは、何もしない時間を
温泉の後は、すぐ次の予定へ向かわず、少しだけゆっくり。冷たい飲み物を一口飲む、本を数ページ読む、今日見た景色を話す。そんなささやかな過ごし方が、雨の日の静けさによく似合います。
ここでいう「回復」は、温泉による身体への効能を示すものではありません。時計や予定から少し離れ、気分と日常に余白を取り戻すという、旅の体験価値を表しています。何かをたくさん達成する日ではなく、自分の速度へ戻る日。雨は、そのきっかけを自然につくってくれます。
館内で見つける、小さな楽しみ
建物の木目や器の手触り、廊下の灯り、窓に映る雨粒。普段なら通り過ぎるものも、ゆっくり歩けば違って見えます。お連れさまと「気になった色を一つずつ見つける」と決めて歩くのも、ささやかな遊びになります。
写真を撮るなら、数を競わず一枚だけ選ぶのもおすすめです。雨粒の付いた葉、湯上がりのお茶、窓辺の明かり。その日の空気まで思い出せるような一枚があれば、旅の記録は十分に豊かです。
外へ出るなら、予定は軽やかに
雨脚が穏やかなときは、傘を差して近くを歩くのも楽しいものです。一方で、山あいの天気や道路状況は変わることがあります。警報や交通情報が出ているときは無理に出発せず、最新情報を確認して予定を組み替えてください。
当日の気象情報は気象庁、地域の観光情報はみなかみ町観光協会をご覧ください。施設の営業、道路、催しなどは変更される場合があるため、訪問前には各施設の公式案内もあわせて確認すると安心です。
雨上がりの景色まで、急がず待つ
雨が上がった直後は、雲がほどけたり、葉の先の雫が光ったり、景色が短い時間で変わります。以前の記事「雨の後、宿のまわりで見つける景色」では、雨上がりの庭や空を見る楽しみをまとめています。降っている間と、上がった後。二つの表情を続けて味わえるのも、雨の日の旅ならではです。
晴れを待ち続けるのではなく、その日の天気を旅の一部にする。雨音を聞き、温かな湯を楽しみ、窓辺で話す。そんな一日が、日常に回復の余白を連れてきてくれるかもしれません。
現在の宿泊案内は公式サイトで
客室、食事、入浴時間、宿泊プランなどの最新情報は、旅籠屋丸一公式サイトでご確認ください。2011年当時の短い記録は旅の記憶として残しつつ、現在の利用案内は公式ページを基準としています。
旧公開日:2011年8月1日
全面更新日:2026年8月10日
参考:気象庁、みなかみ町観光協会、旅籠屋丸一公式サイト
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。幼少期からテニスに打ち込み、全国大会やオーストラリア留学を経験。
中央大学卒業後、中国整体・サプリメント・アロマ関連など、人の身体や暮らしに関わる仕事に携わる。
現在は旅籠屋丸一の代表取締役・15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。
このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

