春の庭では、ひとつの花が咲き終わる頃、次のつぼみがそっと膨らみ始めます。
梅が香り、しだれ桜が枝いっぱいに花をつけ、木蓮の大きな花が空を向く。桃、つつじ、そして雨の季節には紫陽花へ。2016年の旧記事には、そんな「花のリレー」を楽しみにしていた宿の気持ちが残っています。
当時の記事タイトルは「圧巻のしだれ桜」。けれど読み返してみると、主役は一本の桜だけではありませんでした。庭の季節が次々と手渡されていく、その時間全体を待っていたのです。
最初に春を知らせる梅
猿ヶ京温泉の朝晩にはまだ冷たさが残る頃、庭で早く咲き始めるのが梅です。枝先に花を見つけると、冬の長い山あいにも春が届いたようで、少しほっとします。
梅は桜ほど華やかに庭を覆わないかもしれません。それでも、近くを通ったときにふっと香りが届くと、思わず足を止めたくなります。春の始まりは、大きな景色より小さな香りで気づくこともあります。
庭の空気を変える、しだれ桜
梅の次に待っていたのが、しだれ桜です。長い枝に花が重なると、いつもの庭が淡い色の天井に包まれたように見えました。
旧記事では「きちんと咲いてくれれば圧巻」と、少し祈るように書いています。毎年同じ木を見ていても、花の数や咲く時期は天候次第。だからこそ満開に出会えた日は、ため息が出るほど美しく感じたのでしょう。
2016年の開花を待った様子は、「しだれ桜の開花予想をした日」にも残しています。
木蓮と桃が、春の続きを連れてくる
桜が庭の主役になっている間にも、木蓮や桃は自分の出番を待っています。木蓮の花は大きく、枝先で空へ向かって開く姿が印象的。桃は桜とは少し違う濃さの色で、庭にまた新しい表情を加えます。
「桜が終わったら春も終わり」ではありません。次の花を探しながら歩くと、庭は何度でも新しく見えてきます。滞在の日が満開と重ならなくても、その日に咲いている花が旅の目印になります。
つつじが庭を明るくする頃
木々の緑が濃くなり始めると、つつじの色がよく映えます。低い位置でまとまって咲く花は、見上げる桜とは違い、庭を歩く目線のすぐ近くにあります。
湯上がりに庭を歩き、足元の花を眺める。何か特別なことをしなくても、季節が少し進んだことに気づけます。宿の庭は、観光の目的地というより、滞在の合間に季節と出会う場所なのかもしれません。
雨の季節には紫陽花へ
春の花々が一段落すると、雨の似合う紫陽花の季節がやってきます。晴れた日の華やかさとは違い、しっとり濡れた葉と花の色には、山あいらしい落ち着きがあります。
雨の日の旅は少し残念に感じることもありますが、紫陽花にとっては美しい時間。傘を差して歩く庭には、晴天の日には気づかなかった音や色があります。
花の時期は、毎年少しずつ違います
旧記事には具体的な開花時期や予約案内がありましたが、2016年当時の情報です。現在の花の見頃を保証するものではありません。気温、雪、雨、日当たりによって、花の順番や重なる期間も変わります。
けれど、予定どおりにいかないからこそ、旅先で出会った花がその年だけの記憶になります。満開を狙うより、「今は何が咲いているだろう」と庭へ出る方が、少し気楽で楽しいかもしれません。
季節を急がず、庭をひとめぐり
梅から紫陽花まで、花のリレーは何か月も続きます。全部を一度に見ることはできません。それぞれの季節に訪れ、その日に咲く花と出会う。宿の庭は、そんなゆっくりした楽しみ方が似合います。
湯上がりに庭をひとめぐりし、花の前で少し立ち止まる。その数分が、慌ただしい日常から離れる回復の余白になります。現在の宿や季節の便りは、旅籠屋丸一公式サイトからご覧ください。
この記録について
初回公開:2016年3月22日/全面更新:2026年8月10日。旧記事に記された梅、しだれ桜、木蓮、桃、つつじ、紫陽花の順序を基に、2016年当時の季節日記として再構成しました。現在の開花時期、花木の現存、予約状況を示す記事ではありません。旧画像は撮影日・権利確認が必要なため、画像は第2段階で追加します。
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この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。幼少期からテニスに打ち込み、全国大会やオーストラリア留学を経験。
帰国後、堀越高校、中央大学へ進学。
卒業後は中国整体・サプリメント・アロマ関連など、人の身体や暮らしに関わる仕事に携わる。
現在は旅籠屋丸一の代表取締役・15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。
このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

