いつもは鳥の声や、風に揺れる葉の音が聞こえる庭。その静かな景色の中へ、2016年の秋、重機がゆっくりと入ってきました。
地面を掘る音が響き、土の下から配管が姿を見せる。お客様にはご不便をおかけする時期でしたが、私たちにとっては、長く思い描いてきた温泉付き客室がようやく動き出した日でもありました。
この記事は現在の工事案内ではありません。庭が未来の客室へ変わり始めた、2016年9月の宿の記録です。
旧テニスコートから始まった工事
最初の作業場所は、かつてテニスコートとして使われていたところでした。土を掘り、客室へつながる配管を巡らせる。完成した建物だけを見ると想像しにくいのですが、温泉のある客室づくりは、まず地面の下から始まります。
この頃は壁も屋根もなく、客室の大きささえまだ目では分かりません。それでも、地面に描かれた線や掘られた溝を眺めながら、「ここに人が泊まり、夜には灯りがともるのだな」と想像していました。
工事の音と、お客様への思い
旧記事は、万葉亭の中庭へ工事車両が出入りし、作業音が聞こえる場合があることをお客様へお知らせするために書かれました。チェックイン後はできるだけご迷惑をかけないよう作業する、という当時の約束も残っています。
宿を良くするための工事でも、その最中に滞在される方にとっては、いつもと違う音や景色です。楽しみと申し訳なさが同時にあったことを、今でもよく覚えています。工事のお知らせ一つにも、宿側のそんな揺れる気持ちがにじみます。
地面の下から水が現れた
配管工事と同じ時期に、地下水を探す掘削も行われました。旧記事には、掘削によって水が出たこと、以前につくった池へ流す構想があったことが記されています。
土の下から水が現れる瞬間は、何度見ても少し不思議です。建物の工事をしていたはずが、視線はいつの間にか庭や水辺、その先の季節へと広がっていきました。
いつか蛍が舞う庭を夢見て
当時思い描いていたのは、池へ水を流し、カワニナや蛍が育つ環境につなげることでした。客室を増やすだけでなく、夜の庭にも小さな楽しみをつくれないか。そんな夢が、工事の始まりと一緒に書き留められています。
池や蛍の現在については、この古い記事だけを根拠にご案内することはできません。それでも、庭を眺めながら「いつかこんな景色になったら」と話していた時間は、宿づくりの大切な一部でした。計画は、実現したことだけでなく、土地をどう育てたいと願ったかも伝えてくれます。
地面の工事から、柱の立つ冬へ
秋に始まった地面の工事は、冬になると基礎、梁、柱の工程へ進みます。その続きをまとめた「まだ柱だけだった温泉付き客室」では、建物が空へ伸び始めた頃の様子を振り返っています。
配管、基礎、柱、屋根、内装。順番にたどると、ひとつの客室ができるまでに、どれほど多くの人と時間が関わっているかが見えてきます。
工事現場だった庭が、旅の居場所になるまで
重機が入っていた場所には、やがて客室が立ち、誰かが湯上がりの夜を過ごすようになりました。工事の音に包まれていた秋の庭が、静かな旅の居場所へ変わったのです。
現在の客室や宿泊プランは、旅籠屋丸一公式サイトでご覧いただけます。土を掘るところから始まった場所で、今は日常を少し離れ、気持ちに回復の余白をつくる時間が流れています。
この記録について
初回公開:2016年9月30日/全面更新:2026年8月10日。旧記事に記された配管工事、地下水の掘削、池と蛍の構想を基に再構成しました。工事予定、騒音案内、池や蛍の現在を示す記事ではありません。画像は権利確認後の第2段階で追加します。
旅籠屋丸一のご予約
空室、料金、宿泊プランは日付・人数・客室によって変わります。最新情報は旅籠屋丸一の公式予約ページでご確認ください。
予約を確定する前に、宿泊日、人数、客室、食事、合計料金、変更・取消条件をご確認ください。
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。幼少期からテニスに打ち込み、全国大会やオーストラリア留学を経験。
帰国後、堀越高校、中央大学へ進学。
卒業後は中国整体・サプリメント・アロマ関連など、人の身体や暮らしに関わる仕事に携わる。
現在は旅籠屋丸一の代表取締役・15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。
このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

