夕暮れが山の向こうへ沈むと、丸一の館内では灯りの表情が少しずつ変わります。昼に見えていた木目はやわらかくなり、書の墨色や器の輪郭が、静かに浮かび上がります。
私たちが大切にしているのは、隅々まで同じ明るさにすることではありません。歩くための安心を保ちながら、夜らしい陰影も残すこと。今日は、その小さなこだわりのお話です。
灯りも、館内をつくる一つの素材
公式サイトでは、館内に点在する書や工芸、灯の陰影、素材の質感まで含め、滞在そのものを鑑賞体験としてご案内しています。照明は作品を目立たせるためだけでなく、木や漆喰の表情をつなぐ役目も担います。

明暗があるから、足取りがゆっくりになる
廊下の先に小さな灯りが見えると、人は自然に歩幅を整えます。旅館の夜に必要なのは、昼の続きをそのまま持ち込む明るさではなく、休む時間へ移る合図なのかもしれません。
もちろん安全が第一です。暗さを演出するために足元を犠牲にはせず、必要な場所には灯りを置きます。そのうえで、影があるからこそ見える木の深さや、障子越しの光を残しています。

夕食後は、灯りをたどる小さな散歩へ
食事のあと、すぐ客室へ戻る前に館内を少し歩いてみてください。昼に見た書画が、夜には違う顔を見せます。壁に落ちる影や、曲がり角の明かりを写真に収めるのもよいでしょう。
強い光から離れ、目と気持ちがゆっくり夜に馴染んでいく。その変化を味わうことも、丸一で過ごす時間の一部です。
宿主から、旅を計画する皆さまへ
旅は、見どころの数だけで豊かになるものではありません。道中で交わした会話、窓から見えた雲、予定を変えて休んだ時間。あとから思い出すのは、案内表には載っていない場面だったりします。この記事も、予定を埋めるためではなく、ご自分に合う一日を選ぶための手がかりとしてお読みください。
旅の予定や営業内容は、季節や天候によって変わります。お出かけ前には公式情報をご確認ください。予定を詰め込みすぎず、宿に着いてから何もしない時間も残していただけたらと思います。その余白もまた、日常の気分をほどく「回復」のひとときです。
旅籠屋丸一公式サイトと、月刊まるいちの観光記事も、旅程づくりにお役立てください。
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。幼少期からテニスに打ち込み、全国大会やオーストラリア留学を経験。
帰国後、堀越高校、中央大学へ進学。
卒業後は中国整体・サプリメント・アロマ関連など、人の身体や暮らしに関わる仕事に携わる。
現在は旅籠屋丸一の代表取締役・15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。
このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

