旅籠屋丸一・蔵の湯のお休み処|湯上がりを急がない宿主の独り言

高い梁と白いソファが印象的な旅籠屋丸一の蔵の湯のお休み処

旅籠屋丸一の蔵の湯のお休み処には、大きな梁の下に低い卓と座布団があります。湯から上がったあと、すぐに客室へ戻らず、ここで少し座っていかれるお客様をよくお見かけします。

時計を見るでもなく、何かを話し続けるでもなく、ただ天井を眺めている。その姿を見るたび、山あいの宿まで足を運んでくださったことへの感謝とともに、湯上がりには「何もしない続き」があるのだと思います。今日は土曜日。宿主の独り言として、その短い時間をお話しします。

蔵の湯は、古い蔵の時間を受け継いだ湯処です

「蔵の湯 林」の前身は、七代目友七が建てた蔵です。旅籠屋丸一の公式案内では、明治時代の蔵を解体し、使える古材を生かして現在の湯処へ再生したとご紹介しています。

黒く深い色になった柱、頭上で交差する梁、箱階段。新しい材料だけではつくれない陰影があります。湯へ向かう場所でありながら、建物そのものの時間に会いに行く場所でもある。玄関を入った瞬間に、少し声を落としたくなるのは、そのためかもしれません。

石造りの浴槽へ変更された現在の旅籠屋丸一・蔵の湯の内風呂
石造りの浴槽へ新しくなった現在の蔵の湯の内風呂。湯気と黒い板壁が静かな雰囲気をつくります。旅籠屋丸一提供の実写(ブログ使用許諾済み)。

内風呂の湯気から、お休み処の静けさへ

蔵の湯 林には、内風呂と露天風呂、そして休憩スペースがあります。現在の内風呂は石のお風呂へと姿を変え、湯気の向こうに落ち着いた石の質感が見える設えになりました。公式案内では、現在の入浴時間は15時から翌朝10時まで。内風呂は41度、露天風呂は33度が目安として案内されています。

温度の違いを競うように何度も入り直す必要はありません。その日の気分や体調に合わせ、無理のない範囲で。湯から上がったら水分をとり、椅子や座布団のある場所で少し落ち着く。そこまで含めて、温泉旅館の湯時間だと私は思っています。

湯上がりに、話さなくてもよい時間

ご夫婦で並んで座りながら、それぞれ別の方を見ていることがあります。ご家族が卓を囲み、子どもは梁を見上げ、大人は静かに息をつく。会話が途切れても、気まずさがない。宿には、そんな時間がよく似合います。

私たちが大切にしている「回復」は、温泉による治療や身体の変化を約束する言葉ではありません。次の予定へ急がず、自分の速さへ戻る時間。日常に少し余白を持ち帰ることです。お休み処で過ごす数分も、その小さな回復の一つになればうれしく思います。

旅籠屋丸一の蔵の湯のお休み処にある低い卓と座布団
古い梁の下に低い卓と座布団を置いた蔵の湯のお休み処。写真は撮影時の設えです。旅籠屋丸一提供の実写(ブログ使用許諾済み)。

十月の夜は、湯上がりの空気までごちそうです

十月の猿ヶ京温泉は、日中に日差しがあっても、夜になると山の空気がすっと冷たくなります。湯上がりに玄関近くまで歩くと、外の気配と館内の木のぬくもりが、いっそうはっきり感じられます。

旅の予定をたくさん叶えた日にも、何も決めずに到着した日にも、最後に残るのは案外こうした短い場面です。濡れた髪、廊下の灯り、座布団の感触。お客様から「ここで少し休んでいました」と聞くたび、立派な説明よりも、居場所を一つ用意しておくことの大切さを教えていただきます。

お越しくださる皆さまへ、いつものありがとうを

遠くから丸一を見つけ、予定を合わせ、猿ヶ京までお越しくださる皆さまへ。いつも本当にありがとうございます。温泉に入ることだけを急がず、湯上がりの時間まで、どうぞご自分の速さでお過ごしください。

蔵の湯 林の現在の入浴時間、温度、備品は、旅籠屋丸一公式・温泉浴場紹介で詳しくご覧いただけます。営業や設備の案内は変わる場合がありますので、ご宿泊前に最新情報をご確認ください。

東京方面から旅籠屋丸一へのアクセス

お車の場合は、練馬ICから関越自動車道で月夜野ICまで約90分、月夜野ICから国道17号を猿ヶ京温泉方面へ約20分が公式案内の目安です。

公共交通の場合は、東京駅から上越新幹線で上毛高原駅へ。上毛高原駅から関越交通バスの猿ヶ京行きに乗り、終点から宿へ向かう流れが分かりやすいです。時刻や道路状況は変わるため、地図・経路・最新の交通案内はこちらからご確認ください。

温泉浴場、入浴時間、温度、建物の来歴は2026年10月3日に旅籠屋丸一公式サイトで確認しました。写真3枚は旅籠屋丸一の使用許諾済み実写です。館内の設えや運用は撮影時・掲載時から変わる場合があります。本記事の「回復」は、時間・気分・日常の余白を表す非医療的なブランド表現です。


この記事を書いた人

窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目

群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。現在は旅籠屋丸一の15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。