猿ヶ京温泉の9月は、夏と秋が同じ一日の中にいるようです。昼にはまだ蝉の声が残り、陽ざしにも夏の強さがあります。それでも夕方、庭へ出ると、腕を撫でる風が少しだけ軽くなっています。
季節が変わったと宣言するほどではありません。ただ、玄関の灯りが早く目に入るようになり、お客様が羽織りものを取りに客室へ戻る姿が増える。宿をしていると、暦より先にそんな小さな変化から秋を知ります。
猿ヶ京温泉の9月は、夕方から表情が変わります
ご到着の頃はまだ明るく、庭の緑も夏の色を残しています。荷物を置き、ひと息ついてから外を眺めると、山の向こうから影がゆっくり伸びてきます。
食事へ向かう頃には空が青く深まり、白壁と木の建物に暖かな灯りがともります。昼に見た庭なのに、夜は別の場所のように静かです。遠くまで出かけなくても、宿の中で一日の色が変わる。その移ろいも、九月の旅の楽しみだと思います。
薄手の上着を一枚、手の届くところへ
九月は日によって気温の差があり、昼間の服装だけでは夜に肌寒く感じることがあります。薄手のカーディガンや長袖を、荷物の奥ではなく、すぐ取り出せる場所へ入れておくと安心です。
天気予報の数字だけでなく、風や雨の有無でも体感は変わります。ご出発前と当日の朝に、みなかみ町の最新予報をご確認ください。服装に迷ったら重い一枚より、脱ぎ着して調整できるものが旅では役立ちます。
夜の門をくぐると、予定が少し遠くなります

夜の門には、昼とは違う静けさがあります。足元の灯りを頼りに石の道を歩くと、虫の声や葉の揺れる音が近くなります。急いで次の予定へ進むためではなく、いまいる場所へ気持ちを戻すための短い道です。
丸一で大切にしている「回復」は、日常から少し離れ、気持ちに余白を取り戻す時間のこと。連絡や時間割をいったん置いて、自分の呼吸に合う速さで過ごすことです。九月の夜風は、その切り替えをそっと手伝ってくれるように感じます。
明るい時間の庭も、忘れずに

夜の景色が好きでも、朝になったらもう一度同じ門を見てみてください。青い空と緑の中では、昨夜の静かな輪郭が、明るく開いた入口へ変わっています。
同じ場所を夕方、夜、朝と見る。観光地をいくつも巡る旅とは違いますが、宿に泊まるからこそ受け取れる時間です。何かをしなかった一日ではなく、色や風の変化に気づけた一日として残ってくれたらうれしく思います。
お越しくださる皆さまへ
遠い道を走り、山を越えて猿ヶ京温泉まで足を運んでくださることに、いつも感謝しています。季節の境目は、旅支度にも少し迷いが増えます。どうぞ急がず、安全にお越しください。
客室設備は旅籠屋丸一の客室設備案内、現在の宿泊プランは旅籠屋丸一公式サイトでご確認いただけます。九月の夜、門の灯りの向こうでお迎えできることを楽しみにしています。
旅籠屋丸一への行き方
東京方面から車なら関越自動車道の月夜野ICを降り、国道17号で猿ヶ京温泉へ。月夜野ICから丸一は公式案内で約20分です。鉄道なら上越新幹線で東京駅から上毛高原駅まで約89分、猿ヶ京行きバスで約35分が目安。季節や道路状況で変わるため、詳しくはこちら|丸一の交通案内・地図も出発前にご覧ください。
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。宿の日々にある小さな季節の変化と、皆さまへの感謝を「宿主の独り言」としてお届けしています。
天候や気温は日ごとに変わります。旅行前に最新の気象情報と交通情報をご確認ください。

