みなかみ町のりんごは、九月になると少しずつ旅の景色に加わります。山へ向かう道すがら、枝の間に赤や緑の実が見えると、今年も秋の入口まで来たのだなと思います。
宿へお越しになるお客様が、袋からそっとりんごをのぞかせて『途中で見つけました』と笑ってくださることがあります。そのひと言から、その日の寄り道や農園で交わした会話まで伝わってくるようです。皆さまが土地の季節を見つけ、宿まで運んでくださることを、いつもうれしく思っています。
九月は、みなかみ町のりんごの入口
みなかみ町観光協会が紹介する農園情報では、八月下旬から「おぜの紅」や「さんさ」、九月上旬から「つがる」、九月下旬から「あかぎ」などが目安として案内されています。実りは天候や農園によって変わりますので、訪れる前に営業日、収穫できる品種、予約の要否を農園へ直接ご確認ください。
同じ「りんご」でも、酸味の輪郭、甘さ、歯ざわりは品種ごとに違います。名前をひとつ覚えて帰るだけでも、翌年の旅に小さな約束が生まれます。
冷やしたひと切れに、旅の続きがあります

旅の途中で手に入れたりんごは、持ち帰り方法を農園に確かめて、家で少し冷やしてから切るのも楽しみです。包丁を入れたときの音、立ち上がる香り、口の中に残る瑞々しさ。旅先で見た山の色まで、もう一度思い出させてくれます。
何かを急いで整えるのではなく、季節の香りをひと口ずつ味わう。そんな時間が、日常に回復の余白をつくってくれるのだと思います。
山の気候が育てる、長いりんごの季節
みなかみ町の広報によると、町内ではおよそ60の生産者が約74ヘクタールでりんごを栽培し、品種は20種以上にのぼります。養蚕が少なくなった昭和30年代から栽培が広がり、今では秋の風景をつくる大切な果物になりました。
早生品種に始まり、秋が深まると「ぐんま名月」や「スリムレッド」、そして「ふじ」へ。九月の一日だけで終わらず、晩秋まで品種の物語が続くところも、みなかみ町のりんごの魅力です。
一枚の景色より、今だけの味を探して

枝の下から見上げると、りんごの向こうに山の稜線が重なります。けれど農園ごとに景色も育ち方も違い、天候によって収穫時期も動きます。写真とまったく同じ場所を探すより、その日に出会えた品種と香りを楽しんでください。
直売やりんご狩りの情報は、みなかみ町観光協会の農園案内などを手がかりに、最新情報を確認してからお出かけください。
猿ヶ京温泉で、秋の寄り道をほどく夜
りんごを選んだあとは、猿ヶ京温泉までゆっくりお越しください。袋を客室に置き、湯に身を預け、夕食の席で今日の道のりを話す。予定を詰めすぎない夜には、寄り道の記憶が静かにほどけていきます。
現在の宿泊案内は旅籠屋丸一公式サイトでご確認いただけます。九月の最初のりんごと一緒に、皆さまをお迎えできる日を楽しみにしております。
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。宿の日々にある季節の気配と、旅をしてくださる皆さまへの感謝を「宿主の独り言」としてお届けしています。
品種、収穫時期、営業日、料金などは天候や農園により変わります。必ず各農園の最新案内をご確認ください。掲載画像は利用イメージです。

