猿ヶ京温泉の新緑が山々を明るく包んでいた2015年5月。大型連休が終わり、少し静けさを取り戻した宿の庭では、毎週のように花の主役が替わっていました。
芍薬、つつじ、こでまり、ギボシ。大きく華やかな花もあれば、葉のそばで控えめに咲く花もあります。庭を一周するだけで、先週とは違う色に出会える。旧記事は、そんな季節の移り変わりを短く切り取った日記でした。
連休のあとの、やわらかな静けさ
大型連休の宿は、多くの人を迎える忙しい時間です。その賑わいがひと段落すると、急に鳥の声や風の音が近く感じられます。庭に出てみれば、慌ただしい間にも植物は少しずつ育っていました。
新緑の季節は、山全体が一度に緑になるわけではありません。淡い色、黄色がかった色、深い色が重なり、日ごとに景色が変わります。窓から何度眺めても飽きないのは、同じように見えて、同じ日はないからでしょう。
芍薬の華やかさに足を止める
2015年の庭で咲いていたと記された花のひとつが芍薬です。幾重にも重なる花びらには、遠くからでも目を引く華やかさがあります。庭のなかに一輪あるだけで、その周りまで明るく見えます。
花は満開のときだけでなく、固いつぼみが少しずつほどけていく姿も楽しいものです。朝と夕方で表情が変わり、雨のあとは花びらに水滴が残る。宿の庭では、観光名所とは違う近さで季節を眺められます。
つつじ、こでまり、ギボシのリズム
つつじの色が庭へ広がり、こでまりの小さな白い花が集まって咲く。ギボシは花だけでなく、葉の形や重なりも庭に落ち着きを添えます。それぞれの植物が違う高さと形を持ち、風景にリズムをつくっていました。
旧記事は「毎週のように主役が変わる」と表現しています。ひとつの花が終わっても、次のつぼみが待っている。庭の季節をつなぐ花の話は、梅から紫陽花へ|猿ヶ京温泉で待つ春の花のリレーにも残しています。
茶室前の水がめに見つけた春
2015年の記事でいちばん宿の日記らしいのが、茶室前の水がめについての一節です。水がめに苔が生えてくると春を感じる、と書かれていました。
桜の開花や山の新緑は、誰にでもわかりやすい季節の合図です。一方で、いつもの水がめに苔が戻ることは、毎日その場所を見ている人だから気づける小さな変化です。春は、名所だけでなく、足元や器の縁にもやってきます。
暖かな風を楽しむ庭時間
旧記事は、この頃の猿ヶ京は暖かく、風が気持ちよいと記しています。これは2015年当日の印象であり、現在の気候や毎年同じ時期の天候を保証するものではありません。それでも、初夏へ向かう山里の風を楽しんだ記憶は残ります。
庭で長い時間を過ごさなくても、玄関へ向かう途中で深呼吸をし、葉が揺れる音へ耳を傾ける。それだけで旅の速度が少しゆるみます。身体への効果を表すのではなく、日常から離れ、気分と時間に回復の余白をつくる過ごし方です。
宿の庭は、完成し続ける
庭は一度つくれば終わりではありません。植物が育ち、枝が伸び、日当たりが変わるたびに、見え方も手入れの仕方も変わります。2015年の庭の姿は、その長い時間の一場面です。
同じ年に旧テニスコート跡で始めた庭づくりは、宿の中庭づくりで振り返っています。完成を急がず、季節と相談しながら風景を育ててきた記録です。
いま咲いている花は、その日の出会い
この記事に登場する芍薬、つつじ、こでまり、ギボシ、水がめの苔は、2015年5月当時の記録です。現在の植栽、開花状況、見頃、茶室前の水がめの状態を案内するものではありません。
植物は天候や手入れによって毎年表情が変わります。現在の宿の様子は、旅籠屋丸一公式サイトの最新情報をご覧ください。訪れた日は、昔と同じ花を探すより、その日に庭で出会えた色を楽しんでいただければと思います。
2015年5月の庭を残して
花の名前を並べただけの短い記事も、年月が経つとその年の庭を伝える大切な記録になります。どの花が咲き、何を見て春を感じたのか。宿の日常は、こうした小さな観察の積み重ねです。
山の新緑も、水がめの苔も、見ようと思って眺めたときに初めて気づくものがあります。この一ページが、旅先で少しゆっくり庭を見るきっかけになれば嬉しいです。
この記事について
初回公開:2015年5月15日/全面更新:2026年8月10日。新緑の山々、芍薬、つつじ、こでまり、ギボシ、茶室前の水がめの苔を紹介した旧記事を、2015年当時の庭の記録として再構成しました。現在の植栽、開花、見頃、水がめの現況を示す記事ではありません。旧画像は権利確認が完了していないため本文から外し、画像は第2段階で追加します。
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この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。幼少期からテニスに打ち込み、全国大会やオーストラリア留学を経験。
帰国後、堀越高校、中央大学へ進学。
卒業後は中国整体・サプリメント・アロマ関連など、人の身体や暮らしに関わる仕事に携わる。
現在は旅籠屋丸一の代表取締役・15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。
このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

