旅籠屋丸一の丸一印は、丸の中に、まっすぐな「一」を置いた簡潔な宿のしるしです。館内や旅の小物の中でこの印を見つけると、私はいつも、名前を長く説明するより先に宿の顔を覚えていただける気がします。
昔の旅人が目印を頼りに宿を探したように、現代の旅にも、記憶へ戻るための小さなしるしがあります。今回は、バッグとTシャツに残した丸一印を眺めながら、私たちが宿の名前をどのように旅の風景へ溶け込ませているのかをお話しします。
丸と一だけで、宿の名前が見えてくる
丸一印は、円の中に横一文字。形はとても素朴です。それでも白い布、藍色の生地、木の色と重なると、見え方が少しずつ変わります。円には人が集うようなやわらかさがあり、その中央の一文字には、背筋を伸ばしたような潔さがあります。
由来を難しく語らなくても、「丸一」という宿名をそのまま形にした印だと伝わる。この分かりやすさが、長く使い続けられる意匠のよさなのでしょう。華やかな装飾を重ねず、ひと目で覚えていただけること。宿の道具を選ぶときにも、私たちはそんな静かな存在感を大切にしています。

一枚の図柄に、猿ヶ京温泉と三国街道を重ねる
藍色のTシャツには、丸一印のほかに「猿ヶ京温泉」「三国街道」「旅籠屋丸一」の文字が描かれています。猿を思わせる愛嬌のある姿も入り、土地の名と街道の記憶が、一枚の図柄の中でにぎやかに出会います。
宿の名前だけを大きく見せるのではなく、どこから来た宿なのかが伝わるようにする。猿ヶ京温泉という土地、三国峠へ続く道、旅人を迎えてきた旅籠。そのいくつもの気配を、堅い年表ではなく、手に取れる絵柄へ落とし込んでいます。
温泉に入り、食事をして、朝になれば旅は次の景色へ進みます。けれど、旅先で見つけた小物は、帰宅後もふとした瞬間に土地の空気を連れ戻してくれます。バッグを持ち上げたとき、Tシャツに袖を通したとき、猿ヶ京の山の色や宿の灯りを思い出していただけたらうれしく思います。
背中に置いた、小さな宿の署名

Tシャツの背中側には、白い丸一印を小さく添えています。前面の絵柄が旅の物語なら、背中の印は宿からの署名のようなものです。振り返ったときにだけ見える大きさも、少し奥ゆかしくて、丸一らしいと感じています。
ものづくりでは、情報を足すことだけでなく、どこで引くかも大切です。大きく語る面と、静かに残す面。その二つを行き来すると、一つの小物にも宿のリズムが生まれます。館内の照明や器の置き方と同じように、印の大きさや余白もまた、細かな宿づくりの一部です。
旅の記憶を、日常へ持ち帰る
温泉旅館のお土産というと、食べものや土地の名産を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろん、それも旅の大きな楽しみです。一方で、日々使えるバッグや衣類には、旅が終わったあとも長くそばに残るよさがあります。
日常の中で丸一印が目に入る一瞬が、忙しさから少し離れ、旅先で過ごした時間を思い出す余白になる。そんな非医療的な意味での「回復する時間」を、小さな印もそっと手渡してくれるのかもしれません。
館内で扱う品や在庫は時期によって変わります。気になる小物がございましたら、ご滞在の際にフロントでお声がけください。写真の品が常時販売されていることを保証するものではありませんが、いま宿でご案内できるものをお伝えします。
旅籠屋丸一公式サイトでは、宿の客室や温泉、館内の過ごし方をご覧いただけます。
東京方面から旅籠屋丸一へのアクセス
お車の場合は、練馬ICから関越自動車道で月夜野ICまで約90分、月夜野ICから国道17号を猿ヶ京温泉方面へ約20分が公式案内の目安です。
公共交通の場合は、東京駅から上越新幹線で上毛高原駅まで約89分、上毛高原駅から関越交通バスで終点の猿ヶ京まで約35分です。道路状況や運行時刻は変わることがありますので、地図・経路・最新の交通案内はこちらからご確認ください。
写真3枚は2026年9月30日に旅籠屋丸一の使用許諾済み宣材写真から選定し、写っている文字と意匠を確認しました。丸一印の成立年代や歴史的由来は断定せず、現在確認できるデザインと宿主の思いとして紹介しています。交通情報は同日、旅籠屋丸一公式サイトで確認しました。
この記事を書いた人
窪田 一生
旅籠屋丸一 代表取締役/15代目
群馬県・猿ヶ京温泉生まれ。現在は旅籠屋丸一の15代目として、歴史を受け継ぎながら宿の新しい未来に挑戦中。このブログでは、猿ヶ京温泉や旅の魅力、宿づくりへの想いをお届けします。

